大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和58年(む)840号 決定

事件

主文

本件準抗告の各申立をいずれも棄却する。

理由

一申立の趣旨及び理由の要旨

本件申立の趣旨は、「東京地方検察庁検察官酒井邦彦が被疑者瀬端について昭和五八年九月二九日、被疑者芹澤について同月三〇日、警視庁新宿警察署長に対してなした接見等に関するいわゆる一般的指定はこれを取消す。」との裁判を求めるというのであり、その理由は、これを要するに、検察官の接見等に関する一般的指定は違憲違法であるというのである。

二当裁判所の判断

1  当裁判所の事実調の結果によれば、被疑者瀬端は昭和五八年九月三〇日、被疑者芹澤は同年一〇月一日、前記被疑事件についてそれぞれ勾留状の発付を受け、右勾留状の執行により、いずれも現在代用監獄である警視庁新宿警察署留置場に在監中であること、東京地方検察庁検察官酒井邦彦は、被疑者瀬端については同年九月三〇日、被疑者芹澤については同年一〇月一日に、「接見等に関する指定書」(以下「本件指定書」という。)を発し、右代用監獄の長にその謄本を交付したことが認められる。

2  そこで検討するに、本件指定書は、法務大臣訓令事件事務処理規程にその根拠をおくものであるが、その内容は、刑事訴訟法三九条三項の定める指定の方式(日時、場所及び時間を具体的に指定すべきものと解される。)とは著しく異なり、右記載に照らせば、本件指定書は、検察官が当該被疑事件について、刑事訴訟法三九条三項によつて認められる指定権を行使する旨を当該被疑者の在監する監獄の長に対して予告するだけの意味を持つにすぎない一種の事務連絡用の書面と解されるのであつて、これ自体によつては訴訟法上何らの効果も発生していないと言うできである。

従って、検察官が本件指定書を発したことをもつて刑事訴訟法四三〇条にいう同法三九条三項の処分があつたものとみることはできないし、その取消を求めることもできないと言うべきである。

3  よつて、刑事訴訟法四三二条、四二六条一項により主文のとおり決定する。

(田中仁美)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例